核軍縮の前進へインパクトの強い大胆な政策転換である。国際的な潮流となるよう追従する動きに期待したい。
今月発足するドイツの新政権を担う社会民主党(SPD)と緑の党、自由民主党の3党が核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加することで合意した。
3党は政策合意書で、国際的な核軍縮の進展に「指導的な役割を果たしたい」と強調し、「核なきドイツ」を目指すと宣言した。唯一の被爆国ながら条約に背を向け続ける日本とは対照的だ。
ドイツは米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だ。日本と同様に米国の「核の傘」の下にあり、国内の基地には米戦術核兵器が配備されている。
第1回締約国会議は来年3月、ウィーンで開催予定だ。オブザーバー参加表明はNATO加盟国ではノルウェーに次いで2カ国目。欧州では、非加盟のスイスとスウェーデン、フィンランドも参加する方針を明らかにしている。
オブザーバーとはいえ、核廃絶の立場を鮮明にすることになる。先進7カ国(G7)の一員で欧州の盟主であるドイツの参加は、核廃絶論議の膠着(こうちゃく)状態を打開する突破口になり得よう。
広島、長崎と2度も原爆を投下され、惨禍を経験した日本こそ、核軍縮を先導する役目を担うはずだが、米国との同盟関係におもねり、条約の批准どころか、オブザーバー参加にも終始後ろ向きだ。
ドイツ新政権の政策合意について、日本政府は「(条約への)参加よりも、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を核軍縮に一層関与させるよう努力しなければならない」(松野博一官房長官)との立場を繰り返した。
1月に発効した核禁止条約に50超の国と地域が批准しているが、米ロなど核保有国は加わっていない。保有国の不在が条約不参加の理由にはなるまい。核軍縮に関与させる「努力」もあいまいだ。
オブザーバー参加すれば、被爆者が今なお背負う苦しみを訴えることもできようが、その機会を逃すことになる。
広島出身でカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(89)は10月、岸田文雄首相に手紙を送った。
「日本が条約に加われば、世界全体に大きな波及効果をもたらし、核保有国さえ動かします。広島選出の総理大臣が決断せずに、いったい他に誰がするのでしょうか」
首相はかねて「核なき世界」を目指すと言明している。実現の方策を自らの言葉で語るべきだ。
核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」。非核三原則が国会で決議されてから50年になる。以来、歴代政権は国是として堅持してきた。
政府は国是に基づき、核廃絶の議論に率先して加わり、国際社会に核兵器の非人道性をアピールすべきである。
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