文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月下旬に予定されている韓米首脳会談において、これまで米国が要求してきたクアッド(米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安全保障の枠組み)に参加するのではなく、コロナや気候変動など分科ごとの議論に一部参加することを逆提案する予定であることがわかった。青瓦台(韓国大統領府)と米ホワイトハウスは韓米首脳会談の議題としてこの問題を取り扱うことにしている。米朝対話やワクチン確保などの問題で米国の協力を得るために、韓国政府がクアッドへの「部分参加」という折衷案を提示した形だ。しかし韓国政府が中国の反発を意識し今も曖昧な態度をとり続けていることについては、「米中双方から批判を受ける状況を自ら招きかねない」という懸念も出ている。 ■韓国が2021年世界軍事力ランキング6位、米国1位…中国は? ある韓国政府関係者は29日「クアッドへの正式参加は先送りするが、コロナ・ワクチン、気候変動、新技術協力などの分科に部分参加するという方針は決まりそうだ」「文大統領とバイデン大統領が韓米首脳会談でこのような内容で合意し発表する可能性が高い」と伝えた。 米国主導の対中けん制を目的とする安全保障の枠組み「クアッド」は最近になって「コロナ・ワクチンの提供」「半導体を中心とするサプライチェーンの構築」など、様々な分野へと協力を拡大している。米国は同盟国の韓国をはじめ英国、ベトナム、フィリピンなどを念頭に参加国を拡大する「クアッド・プラス」を形成する考えで、実際に韓国政府にも様々なルートを通じてクアッドへの参加を求めてきた。しかし現時点で韓国政府は「米国からの正式な要請はなかった」と説明している。韓国外交部(省に相当)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官も先日、韓米首脳会談でバイデン大統領がクアッドへの参加を要求してくる可能性について「そのような状況にはならないだろう」と述べた。
しかし韓米首脳会談を前に、韓米双方はこの問題を含む様々な議題についてすでに協議を進めているという。ある与党関係者は「米国がクアッド・プラスへの参加を求めているのは事実」と認めた上で「韓国は自分たちが貢献でき、なおかつ中心的な役割を果たせる分野において、クアッド参加国と分野ごとの協力を模索できるという立場だ」と説明した。別の関係者は「ブースター・ショット(ワクチンの第3次接種)などを行うにはワクチン・スワップなどを通じてワクチンをさらに確保しなければならない。このような状況で米国の要求に事実上応じるということだが、それでも完全な参加ではない」と述べた。韓国政府は中国の顔色をうかがいながら「クアッドに片足だけをかける立場を選んだ」と言えそうだ。 中国はこれまでクアッドについて「徒党を組んでいる」「冷戦時代の思考」などとしてクアッド参加国を強く非難してきた。中国は韓米首脳会談を前に最近になって韓国に「クアッドに参加するのか」と複数回にわたり圧力を加えてきたという。 米中の戦略的な競争が本格化する中、専門家は文在寅政権が今後も「戦略的にあいまいな態度」「バランス外交」などを強調し続けるようでは、「どちらからも信頼を得られなくなる」と指摘する。バイデン政権はクアッドを重要な外交政策の一つとしており、また韓国政府には韓米日による協力と協調を強く求めている。しかし韓国与党は「米中対立の中でどちらかに立つことは非常に危険」とする慎重論が今も根強い。実際に青瓦台のある関係者は「クアッドは5年前に韓中関係を揺るがしたTHAAD(在韓米軍の高高度ミサイル防衛システム)と同じくらい敏感な問題になりかねない」「米国と中国の2つのうち1つを選択すべき必要はない」と断言した。文大統領は今月21日に報じられた米ニューヨーク・タイムズとのインタビューでも「米国は北朝鮮問題や気候変動を含むその他の世界的な関心事については中国と協力すべきだ」との考えを示した。
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