LINEが社会貢献活動を担う財団として設立したLINEみらい財団(東京都新宿区)は、新型コロナウイルス感染症に関わる休校に対応するため、3月2日よりLINE公式アカウント「新型肺炎休校サポート LINEみらい財団」で無料でオンライン学習コンテンツを提供している。 当初は中高生向けのみで、教科や問題数なども限られていたが、要望の高まりを受け、小学生向けの学習コンテンツも追加した。同財団公共政策室副室長の村井宗明氏は「今後のEdTechにはSNSの利用が不可欠」と話す。(取材・昆梓紗) 同財団は2019年12月に発足。教育関連の取り組みをさらに充実させるため、学研、数検、市進、ケンブリッジ英検、東京都英語村をパートナーに迎えた。具体的な取り組みについて話し合っている最中、新型コロナウイルス感染症によりさまざまな自治体で休校が決定。当初は千葉県市川市からの相談を受け独自サービスとして開発を進めていたが、急遽全国版の開発に切り替え、3月2日にリリースした。開発期間は3~4日だった。 LINE上で公式アカウント「新型肺炎休校サポート LINEみらい財団」を「友だち追加」すると、トーク画面で科目を選択できるようになる。科目ごとに用意されているコンテンツは異なり、現在数学は動画、国語は動画と電子書籍などだ。 また生配信機能「LINE LIVE」を使った「LIVE授業」も人気だ。例えば新高校一年向けの中学数学を総復習する授業では約4,700人が視聴参加。「LIVE授業の特徴は視聴者がリアルタイムにコメントや質問をできること」だと村井氏は話す。若年層向けのファッションショー「東京ガールズコレクション」と連携し、「TOKYO GLOBAL GATEWAY」で行われたLIVE授業では2万人が参加した。当時高校生のタレント・モデル活動をしている人に授業を受けてもらうことで、ターゲット層に興味を持ってもらうことができた。今後もLIVE授業は定期的に行っていく。 またLINEのコミュニケーションツールという特性を生かし、「友達と一緒」ボタンを設置。LINE、Twitter、Facebookで学習状況をシェアできる。 利用者は徐々に増加しており、約25万人(2020年4月20日現在)。中高生向けだけでなく、小学生向けも作ってほしいという保護者からの要望が多かった。そこで4月16日より学研ホールディングスと新たな協定を締結し、小中高生とその保護者を対象に「Gakken 家庭学習応援プロジェクト」をLINE公式アカウントに新たに開設。学習システムの提供を開始した。小学生向けに関しては国語、算数、英語は全学年対応、社会、理科は小学3~6年対応になっている。 オンライン学習では受け身になりがちだが、そうならないためにも力を入れているのが問題の開発だ。動画だけでなく練習問題も併せて解くことで、学習効果を高める狙いだ。 「LINE学習の一番の強みは英語のリスニングと選択問題」と村井氏は話す。ヒアリングでは音を聞いてそのまま問題を解ける。また、社会、理科などでは3−4択の選択問題形式をテンポよく解くことができる。動画を見るだけでなく、積極的に問題を解く方向に舵を切る予定だ。 一方で課題もある。特に国語などの長文問題はスマホの画面と相性が悪く、記述式問題も難しい。紙ベースでの学習と組み合わせることが必要になってくる。 オンライン学習というと、PCに向かって、というイメージがあるが、内閣府のネット利用環境調査(※1)では、高校生のインターネット利用機器のうちPCは28%、スマホは97%だった。また総務省の調査(※2)における10代の「ネット利用項目別平均利用時間」を見ると、平日にブログやウェブサイトを見る時間が12.1分なのに対してSNSは58.9分(休日はともに16.4分と96.8分)。若年層の利用実態に合った教育分野でのICT活用が求められる。「学習に対してスマホを容認する傾向は少ないが、スマホでの学習も考えていかなければ多くの子どもにリーチできない。今後のEdTechはスマホやSNSを軸に考えていく必要がある」(村井氏)。 今回は休校に対応した形でのサービス開始となったため、「新型肺炎休校サポート LINEみらい財団」のアカウントは休校措置が終了した段階で閉鎖する予定。しかし同財団では今後も教育アカウントを充実させていくとし、さまざまなパターンのアカウント開発を進め順次リリースしていくことを検討している。 (※1)内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」 (※2)総務省「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」 【特集】主流になるか?オンライン学習 新型コロナウイルス感染症の流行による休校・休園が決まって2カ月。いまだ再開の見通しが立たない。学習塾や習い事でも通塾やレッスン休止が相次いでいる。そんな中、自宅にいながら学習ができるオンライン学習サービスへの注目が急速に高まっている。現状と、上手な利用法、今後の展開について取材した。(不定期更新)
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