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気候変動対策を協議する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に参加する197カ国・地域は13日夜(日本時間14日早朝)、石炭の使用をめぐり最後まで交渉を重ねた末、成果文書「グラスゴー気候協定」を採択した。世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求し、石炭火力発電を「段階的削減」するなどの表現に合意した。
気候変動の原因となる温室効果ガスを特に多く排出する石炭の使用削減について、気候関連合意文書が言明するのは初めて。
会期を1日延長して交渉を重ねた各国はさらに、温室効果ガスの今まで以上に削減するほか、気候変動の被害を特に受ける途上国への資金援助を増やすと合意した。
世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えるという「1.5度目標」の実現に向けて、さらに温室効果ガス排出量の大幅削減を約束するため、各国は来年また集まると約束した。
しかし、各国が今回約束した取り組みの内容では、「1.5度目標」の実現には不十分。すべての約束を実施したとしても、地球の平均気温は今世紀末までに2.4度上昇すると試算されている。地球の生態系への甚大な被害を防ぐには、1.5度目標の実現が必要とされている。
2015年のパリ協定で各国が合意したこの「1.5度目標」の実現には、世界全体の温室効果ガスの排出量は2030年までに2010年比で45%削減する必要がある。さらに今世紀半ばまでには、ほぼゼロにしなくてはならない。

石炭をめぐる攻防
今回の合意文書案には当初、石炭の使用を「段階的に廃止」という表現が含まれていた。しかし、合意採択を協議する最後の全体会議でインド代表がこれに反対。ブペンダー・ヤダフ環境相は、「まだ開発目標や飢餓削減に取り組まなくてはならない」発展途上国が、石炭使用や化石燃料への助成金を段階的に廃止すると約束するなどできないと主張した。
インドのこの主張を中国も支持し、各国は最終的に「段階的廃止」ではなく「段階的削減」という表現で合意した。これには、多くの関係者や環境活動家が落胆を示している。
議長国イギリスの前ビジネス相でもあるアロク・シャーマCOP26議長は、「この展開について、謝ります」と全体会議を前に謝罪。「本当に申し訳ない」と述べた。ただし、合意全体を守るためには、不可欠な対応だったと説明すると、声を詰まらせて涙ぐんだ。この議長の様子に、各国代表は大きな拍手を送った。
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世界の1年間の二酸化炭素排出量の約4割が、石炭を燃やすことで発生する。石炭に関する表現が弱められたことに批判が集まる一方で、気候変動対策に関する国連の合意文書で石炭対策が初めて明記されたことを評価する声も多い。
途上国支援は
発展途上国の再生可能エネルギー移行など気候変動対策については、2009年のCOP15で富裕国は毎年1000億ドルを提供し支援すると約束した。前回の合意では2020年まで援助が行われる予定だったが、この目標は果たされなかった。
シャーマ議長はこれについて、2025年までに5000億ドルを拠出すると発言した。
途上国の多くは、気候変動による変化に発展途上国が対応できるよう、先進国が資金援助すべきだという、いわゆる「損失と損害」と呼ばれる仕組みについて、前進がなかったことに落胆をあらわにした。しかし、今後もこの実現に向けて協議を続けるという前提で、成果文書に合意した。
評価と落胆と
議長国イギリスのボリス・ジョンソン首相は、世界がやがて「グラスゴーのCOP26を振り返り、気候変動の終わりはあそこで始まったと思う」ようになってもらいたいと述べ、「その目標へ向かって疲れ知らずの努力を重ね続ける」と約束した。
ジョンソン首相はさらに、「今後数年の間にさらに膨大な作業に取り組まなくてはならないが、今日の合意は大きな一歩前進だ。何より、石炭使用の段階的に減らしていくという初の国際合意が得られたし、地球温暖化を1.5度に抑えるための行程表がまとまった」と成果を強調した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「私たちのもろい惑星の安全は風前のともしび状態だ。私たちは未だに、気候破局を目前にしている」と警告。「もはや緊急事態モードに入るべきだ。そうしなければ、(温室効果ガスの実質排出量を)ネットゼロにする可能性そのものがゼロになる」と述べた。
スイスのシモネッタ・ソマルガ環境相は全体会議で、合意文書について「合意した文言に大いに落胆していると述べておきたい。石炭と化石燃料助成金に関する文言は、不透明な手続きの結果、薄められてしまった」と批判した。
ソマルガ環境相はさらに、「この合意によって私たちは1.5度目標の実現に近づかない。むしろ、実現がもっと難しくなってしまった」と失望感をあらわにした。
地球の平均気温が産業革命前から1.5度以上、上昇した場合、地球は今まで以上に極端な酷暑にさらされ、それに伴う異常気象や森林火災、海面上昇など様々な変化によって生態系が脅かされることになると、多数の科学者は予測している。
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環境保護団体「Friends of the Earth International」のサラ・ショー氏は今回の合意について、「まったくとんでもない話だ。目標実現の手段がなにも含まれていないなら、ただ『1.5度』という言葉を口にするだけでは、無意味だ。COP26は、南半球の諸国を裏切ったものとして記憶される」と強く批判した。

石炭について合意の文言が「段階的廃止」から「段階的削減」に変更されたことについて、環境保護団体「グリーンピース」のジェニファー・モーガン国際事務局長は、「たとえ単語を変えても、今回のCOPから発せられたシグナルは変えられない。石炭の時代は終わりつつある」と述べた。
「まだ石炭を燃やしている国を含めて、クリーンな再生可能エネルギーへ移行することが、すべての国の利益になる」
一方、慈善団体「アクション・エイド」のラース・コッホ氏は、化石燃料のうち石炭だけが明記されたのは残念だと言い、「石油やガスを100年以上、掘削して環境を汚し続けてきた富裕国は、今まで通り行動し続けられるようになってしまった」と批判した。
COP26のその他の合意
からの記事と詳細 ( 【COP26】 新しい気候合意採択、石炭の使用削減に言及 - BBCニュース )
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