前回の記事で、メンバーに意見を求めても、「特にありません」と返ってくるだけだったり、誰も何も返答せずに沈黙が続いたりするような、“無反応症候群”がはびこっている状況の問題点について指摘した。私にはこの元凶は、顔見せしないリモート会議にあると思えてならない。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博) ● 「カメラもマイクも常時オフ」 暗黙のルールが無反応を助長 リモートワークが一般化し、対面で話をしたり会議をしたりする機会が格段に減り、メールで仕事を進めたり、電話やリモートで対話や会議をしたりすることが普通になった。リモート会議の実施にあたっては、説明役だけがカメラやマイクをオンにして、他の参加者は基本的にカメラとマイクをオフにして参加するというルールを設けている会社が多い。 このルール、明文化されている企業もあれば、暗黙のうちに、そうすることが習慣になっている企業もある。 理由を聞いてみると、「インターネット回線に影響を及ぼすから」「タブレットやスマホでアクセスしていて画面が不安定になり、見る側にストレスを与えるから」「参加者が黙って聞いている顔を映しても意味がない」「自宅の様子が映ってしまう」「顔のアップや私服を見られたくない」「家族の声など予期せぬ音声が入ってしまう」などと、カメラとマイクをオフにすべきだという意見が、次々と挙げられる。 しかし、リーダーからは「顔が見られずに、メンバーの状況が把握できない」「表情が分からないので、賛成なのか反対なのか、反応がうかがいづらい」「聞いているのかいないのかが分からず不安だ」「会議が盛り上がらない」という懸念が示される。
どうやら、一方的な説明が行われるだけの会議を想定したルールが独り歩きして、双方向のコミュニケーションを取ることが目的の会議にまで、カメラとマイクをオフにして参加してもよいという暗黙のルールが侵食してしまっているように思えてならない。このカメラとマイクをオフにした、いわば顔見せしない、声出ししない会議が、意見を求めても、返答せずに沈黙を続けるような無反応症候群を助長しているのではないか。 ● カメラやマイクを常時オンにして リモート会議の実施を 話し手の顔は見えていても、聞き手の自分の顔は相手には見えていない。リモートといえども、お互いの顔を見合って会議している時に比べれば、どのような人でも、会議への関心度・集中度が低下して、反応をしづらくなるのが当たり前だ。 マイクを常時オフにした状態で、意見を求められても、マイクをオンにするという動作と、マイクがアクティブの状況になるまでの時間が必要になる。反応する瞬発力を損なうことになる。 カメラとマイクをオフにして参加することは、意識的か無意識的かを問わず、いわば内職を可能にする状況を生み出し、そのことも反応を鈍らせる可能性がある。一方的に聞くだけという前提になっているので、そこで発言を求められても、すぐに気持ちが立ち上がらないのも無理はない。発言するたびにマイクをオンにする操作と反映するまでのタイムラグは、時間のロス以上に、発言を沈滞を生む。 リモート会議で、これを繰り返していくと、この状況が習慣化し、いざ対面での会議を行った場合にも発言ができず、沈黙する人が多くなり、沈黙する時間が長くなるという悪循環に陥ることは目に見えている。リモート会議でカメラとマイクをオフにすること自体が、無反応症候群の元凶なのだ。 だとすれば、講ずるべき対策は単純だ。カメラとマイクを常時オンにして、会議をするようにしていけばよい。 私は現在、リーダーシップスキルやビジネススキルを動作や話法で瞬発力をもって繰り出す能力開発プログラムを、リモートや対面で実施している。理屈や理論の解説を行わず、双方向演習と問答で進行するプログラムなので、私と参加者との間でも、参加者同士の間でも、お互いの反応を見ながら演習や問答をしていく仕組みになっている。そのため、リモート実施の場合は、カメラとマイクを常時オンにして参加できる人を対象にしている。このことは、なりすまし参加防止にも役立つ。
からの記事と詳細 ( 「カメラもマイクも常時オフ」のリモート会議が組織をダメにする理由(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース )
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