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Sunday, March 1, 2020

新型コロナウイルスで、テキサス州の世界最大級フェスに不安の影(片瀬ケイ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

世界中の人が集うSXSW

 いつもの年なら、米国テキサス州で3月といえば州都のオースティン市で開かれるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)フェスティバルのエキサイティングな話題で盛り上がる。

 今年も3月13日から22日までの10日間にわたり、映画、文化、テクノロジー、音楽など様々な分野で注目されるアーティストと観客が、世界中からやってくる。

 もともとは1987年に新たな才能を発掘するためのカジュアルな音楽フェスティバルとして始まった。しかし今や映画や音楽だけでなく、あらゆる分野でクリエイティブなインスピレーションに触れようと100ヶ国以上から延べ40万人以上が集まる大イベントに。

世界中からSXSWにやってくる。Photo by Dave Pedley SXSW提供
世界中からSXSWにやってくる。Photo by Dave Pedley SXSW提供

 SXSW開催期間の10日間、オースティン市の人口は、普段の100万人弱から3割近く増えることになる。

 会期中は様々なテーマで著名人や有識者を交えたビジネス・カンファレンスも開かれる。日本から来るアーチスト、企業の出展参加も年々増え、今年は特別スピーカーとなるアニメ監督の渡辺信一郎氏など28人の日本人がスピーカーとして参加するそうだ。(注1)

新型コロナウィルスを懸念する声

 全米から愛されているSXSWだが、2月29日にはCOVID-19による米国初の死亡者がワシントン州で出たこともあり、この超大型フェスティバルの開催を懸念する声があがりはじめた。

 SXSWのキャンセルを求めるオンライン署名活動がChange.orgで始まり、3日間で1万人を超える署名が集まった(米国中部時間3月1日午後5時現在)。まだまだ増えそうな勢いだ。(注2)

 テキサス州ではサンアントニオ市のラックランド空軍基地で、武漢からの退避者やダイヤモンド・プリンセスからの帰国者を隔離しており、2月28日の時点でこうした帰国者のうち11人がCOVID-19を発症している。しかしテキサス州のそれ以外の地域では感染者はでておらず、感染リスクは低いと考えられている。

進む開催準備

 一方、テキサス州のグレッグ・アボット州知事は、2月27日、新型コロナウイルス対策について記者会見を行い、テキサス州は1月末の段階から米疾病対策予防センター(CDC)および連邦政府、州内の関係機関との緊密な連絡網を確立し、どのようなシナリオにも対応できるよう万全の準備を進めていると述べた。

 またSXSW開催についての記者からの質問に対し、「地元の保健当局や医療機関、実行主体とも連絡を取り合い、モニターを続ける。地元の保健当局の判断による」と答えた。

 米国では新型コロナウイルスの感染が広く拡大している国への旅行制限を開始したが、国内での日常活動はイベント開催を含め、現在のところ制限はない。

 オースティン市保健当局も同日時点で、同地域では人から人への感染リスクは低いとして、SXSWを延期、変更する予定は現在のところないとの見解を示している。ただし状況の変化はモニターしつつ、全米のガイドラインに沿った判断をするという。

 

 3月13日からの開催に向けて、SXSWは例年通りに開催準備を着々と進めている。同市では、SXSW以外にも40万人規模が集まる様々なイベントを年に数回実施しており、その意味では大型イベントに慣れた地域ではある。SXSW側も地元の保健当局とともに、参加者の安全を第一に取り組む考えだ。(注3)

 SXSWには中国からもカンフェレンス、展示会、ミュージック・ショーケースなどへの参加や、市長を含む訪問団が渡米が予定されていた。しかしこれについては、2月6日の段階で中国側をとりまとめているChina Gathering社が、今年の参加は見送ることを発表している。

それでも残る懸念

 日本政府は、新型コロナウイルスの感染について、感染者の約8割は誰にも感染させていたかったものの、密閉空間など換気が悪く、人が密に集まって過ごすような場所が集団感染の共通点だと発表した。(注4)

 SXSWでも展示会場などでは、多くの人が手で触って体験するものも多い。またオースティンはライブの街。音楽フェスでは、ホールや野外ステージでのコンサートもあるが、街中に何十軒とあるライブハウスや、時には教会やギャラリーといった屋内で、演奏をまじかに見ることができる。肩がぶつかり合うような距離で音楽ファンとアーチストが集い、感動を共有できるのが魅力なのだが、それが裏目にでる可能性がないとは言えない。

アーチストに文字通り触れあえる雰囲気がSXSW音楽フェスの醍醐味 Photo by Adam Kissick SXSW提供
アーチストに文字通り触れあえる雰囲気がSXSW音楽フェスの醍醐味 Photo by Adam Kissick SXSW提供

 政府が国民の活動に干渉するのを嫌う米国では、差し迫った必要性がない限り、政府がイベント中止を要請することは考えにくい。現在のところCDCをはじめとする保健当局も、20秒以上かけた手洗いの徹底、咳やくしゃみのエチケットを守る、熱のある時は自宅療養するといった常識的な予防対応を呼びかけているだけだ。

 ちなみに、CDCがマスクの使用を推奨しているのは感染者や呼吸器疾患を持っている人と医療従事者だけで、健康な人にマスクの使用は推奨していない。実際、米国の街中でマスクをしている人はほとんど見かけない。

 米国は自己責任の国でもある。SXSW側でも入場者が手指の除菌用ローションやワイプなどは用意し、会場内やホテル等の施設も除菌につとめるが、参加者も意識的に手を洗ったり、洗っていない手で目や鼻、口などを触らないようにするなどの予防を心掛ける必要がある。また何につけても米国の医療費は日本人には考えられないほど高額なので、日本からSXSWに来る予定の人は、海外旅行保険には必ず加入しておいた方がよさそうだ。

参考リンク

(注1)SXSW2020に参加する日本のアーチスト、スピーカー、企業についてのプレスリリース(SXSWの日本オフィスをつとめるVISIONGRAPH社)

(注2)SXSWの開催中止を求めるオンライン署名

(注3)SXSW2020 クライアントの健康と安全についてのお知らせ

  

(注4)「換気悪い密集空間を避けて」 感染場所の特徴公表 朝日新聞 

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